Vol.2 株式会社キリン堂 人事部 部長 執行役員 川畑 秀一 氏

Vol.2 株式会社キリン堂

株式会社キリン堂

http://www.kirindo.co.jp/index.shtml

  • 人事部のビジョン・ミッションを表すキーワード:一人ひとりの良さを最大限活かす
  • 人材育成に関するキーワード:仕事のなかで人は育つ、現場の仕事に直結する実践的な学び
  • 求める人材像に期待するキーワード:人の役に立ちたいという貢献心、企業理念への共感、活躍できるという展望
  • 学生へのメッセージ:やらなかった後悔はしない、なんでも良いからチャレンジ、失敗は成功のナレッジ

人事部 部長 執行役員 川畑 秀一 氏

株式会社キリン堂は大阪市に本社を置くドラッグストアチェーンで、持株会社である株式会社キリン堂ホールディングスは一部上場企業です。近畿圏を中心に358店(2018年2月現在)をチェーン展開し、現在500店を目指して事業拡大中です。川畑人事部長に、人材のビジョン・ミッション、人材育成・求める人材像についてお考えを伺いました。

□ビジョン・ミッションについて

人を中心とした経営がテーマ、一人ひとりの良さを最大限活かすにはどうするか。

 弊社におけるテーマは“人を中心とした経営”です。つまり人事が要(かなめ)ということですから、責任は重い。人で勝負していくにはどうしたら良いか、常に考えています。従業員一人ひとりの良さを掴んで最大限に活かしていくにはどうすれば良いのか。人を大切にし活用していく土壌や仕組みをどうすれば作れるのか。こうした課題を持ちながら会社の変革の推進を担い、様々な取り組みにチャレンジしてきています。現場からもこの変革に対する期待と変化の手応えを感じています。
 2年前に私が人事部長として着任した当時の印象は、人事制度や人材育成の仕組みは旧態依然としていて、ビジネスのあり方とつながっていませんでした。人事は専ら給与処理などの業務オペレーションが中心で、教育制度や評価制度などを含めた全体体系としてはまだこれからという状態で、とてもやりがいがありました。
 人事制度や教育制度、働き方改革といった制度的な事はよく取り上げられますが、その手前のところが肝心だと考えています。それはどういうことかと言いますと、人の良さを引き出すことを具体的に考えたときに、社内の従業員にこんなチャンスがあるよと投げかけたときに、手を上げる文化をつくろうと考えました。これは、人の意思や想いを中心にしていこうとすることであって、制度的なものでカタチにできるかと言えば限界があることだと思います。従業員の活躍チャンスを提供する、ボールを投げ続けるという取り組みです。今までなかった取り組みでした。具体的には、人事インフォという広報を作って、月に3~4回のペースでどんどん情報を投げ続けています。

目指したのは、手を挙げる文化と称賛する文化です。

 その社内広報を使ってはじめて投げたボールが、「人事に人材採用の女性リーダーをつくります。女性リクルーターにどなたか立候補しませんか!?」というものでした。誰も手が上がらなかったらどうしようという不安がありましたが、実際には9名が手をあげてきました。
 面接してその中から1名を配置しました。この方が本当に大活躍して、日経マイナビの専門店分野では就職人気ランキングの9位という実績を残すことができました。弊社の歴史上画期的なことで、着任2年で大きな実績を残すことができました。採用ブランディングに成功した成果と言えると思います。彼女はもともと、店舗のスタッフで、社内公募をかけた時には、待ってましたとばかりに一番に立候補してきた方です。
 次に「ほめる文化づくりに取り組むよ」とメッセージを発信しました。弊社には歴史があって(現在はずいぶん柔らかくなったのですが)、封建的な上意下達的な雰囲気があったり、なにかあったら叱られる、上手くいかない時には反省して落ち込んでしまうという状態がありました。こうした仕事に対してなんとなく後ろ向きになってしまう要因として、従業員一人ひとりに良いところがたくさんあるのに、誉められたことがないのではないかと考えました。
 そこで社長賞を設けました。毎月お客様から評価されるメールや手紙が届いた社員を誉めるようにしたわけです。これをずっと続けてきたことで、ようやく会社の雰囲気も変わってきたと感じています。

□人材育成について

理想は店舗の現場で仕事をしながら人が育つ状態です。

 もともと人材活用に関しては大切に考える会社で、人を育てることに卓越した人材が何人もいました。どんなに教えることが大好きでも、350を超える店舗すべてを回ることは物理的に不可能です。こうした人材は貴重で引き続き活躍を期待していますが、私の考える人材育成の理想は、店舗の現場で仕事をしながら人が育つという状態です。先のような人材育成のできる人材が、各店舗あるいは地域エリアにいるという状態を作りたいのです。
 ポイントを挙げれば、販売のあり方、商品を売りつけるのではなく、お客様の話に耳を傾けて最適な商品を提案していくことができる。その手前で、お客様に売り込むのではなく、まずはお聴きすることがしっかりできる接客姿勢を根づかせたいと思います。その上で、商品知識も体と薬の関係を理解した説明ができるとか、昨晩のテレビの内容などとつなげて説明できるようになればかなり変わってくると思います。すぐに実現できる話ではないのですが、そういう教育をしっかりやっていきたいと考えています。
 販売という仕事を通して、人の役に立つことのできる人を育てていく。お客様から「顔が見たくてきたよ。また会いに来るね。」と声をかけられるような接客を目指したいという想いで取り組んでいます。従業員の中には、お客様から財布ごと手わたされて相談に応じられる方もいます。それくらいの信頼を得てお客様とつながることもできるわけです。

実際的なロールプレイですぐに仕事に活かせる学びの機会にしています。

 新入社員研修の内容も毎年様々な工夫をしています。たとえば、研修参加者全員が、他のメンバーと総当たりで接客のロールプレイをします。1人が店員役、1人がお客様役になるペアワークを参加者全員とする。最後には、一番感動した接客をした社員が選ばれ表彰されるというものです。知識やスキルを学習するというよりは、やってみて分かる気づき、何度もいろいろな人とロールプレイして身につく学びを大切にした取り組みです。さらにこのロールプレイは、シーズンによって売る商品が異なります。経営上のビジネスプランに基づいてその時に売れる商品、売りたい商品を実際に題材にして行うので、すぐに現場の仕事に活かす事ができます。現場任せのOJTではなく、会社全体の経営の仕組みとしての取り組みになっています。
 このような実践的な取り組みによって、新人が早く成長していくことを期待しています。仕事を通じて人は育つ。研修をつくることは目的ではなくて、現場で人が育つ仕組みをどうすれば良いかをこれからも考えながら人材育成をしていきたいと思います。

□求める人材像について

多様性を大切にしています。ただし3つだけ条件があります。

ひとつのステレオタイプの人材を求めているのではありません。職種に応じた人材像があるという意味ではなく、多様性があるからこそイノベーションが起こると考えています。また、多様性を許容できることが弊社の強みになると考えています。
最低限の条件をつけるとすれば3つあります。1つは、人の役に立ちたいという想いを持っていることです。会社が大切にしたい一番の価値ですし、お客様へ貢献したいという思いがないとやっていけないと思います。2つ目は、弊社の企業理念に共感していることです。弊社が大切にしている理念と合わなければ、いくら仕事ができてもお互いに良い関係性を築くことはできません。最後は、弊社に就職して活躍できそうだという展望を持っていることです。よし活躍しようと前向きな気持ちで入社して欲しいです。

□学生へのエール

やらなかったことを後悔しないように。失敗は成功へのナレッジです。

反省はしても後悔しない、という心がけが大切ではないでしょうか。いろいろな事に関心を持って、この時この瞬間に想いをこめて取り組む。“あちゃー、やっちまったぁ“という失敗の心配をするよりは、やりたいことをやらなかった時の後悔を心配した方が良いと思います。
失敗は成功へのナレッジです。失敗が多いほど人は成長するし、財産になります。なんでもかまわないと思います。興味を持ったら、どんどんチャレンジしてください。

発行人:一般社団法人プレミア人財育成協会 代表理事 勝亦 敏