Vol.12 株式会社キリン堂 代表取締役 寺西 豊彦 氏

Vol.12 株式会社キリン堂

株式会社キリン堂

http://www.kirindo.co.jp/index.shtml

  • 社員の特徴を表すキーワード:対話による問題意識の共有、共に解決方法を考える
  • 会社のビジョンを表すキーワード:人を活かす、人が人によって価値や喜びを生み出す
  • 入社して欲しい人に期待するキーワード:人に対する興味、成長意欲

寺西代表取締役 寺西 豊彦 氏
プロフィール
京都薬科大薬学部卒業。1980年大手薬品メーカーへ就職。1982年(株)キリン堂へ転職。1985年取締役就任。その後、社内各部署の部門長、副社長などの重責を歴任し、2012年代表取締役就任。現在、株式会社キリン堂ホールディングス代表取締役を兼務。

株式会社キリン堂は大阪市に本社を置くドラッグストアチェーンで、持株会社である株式会社キリン堂ホールディングスは一部上場企業です。近畿圏を中心に358店(2018年2月現在)をチェーン展開し、現在500店を目指して事業拡大中です。従業員約7,000人を束ねる寺西社長に、企業ビジョンや人材育成などについて背景にある理念まで掘り下げてお話を伺いました

─ 御社のビジョンについて教えて下さい。

人が人によって、価値や喜び、生き甲斐を感じ産み出す会社を目指しています。

戦後の経済成長に呼応するようにドラッグストアチェーンとして順調に事業拡大をしてきましたが、これから先は不透明です。超高齢化社会、少子化社会の到来で、市場がシュリンクしてきています。また商品購入の方法もインターネットが日常的になり、決済手段としてはビットコインなどの仮想通貨が使われるような時代です。世の中が変わっていくなかで、従来通りの考え方や方法では成長が難しいと考えています。
商品の購入にお店や人が介在しなくても済む流れがあるからこそ、私どもは、人をクローズアップしていこう、人を活かしていくことをベースにしていこうと考えています。確かに、ネットを使った人を介さないビジネスは伸ばさなくてはなりませんが、人を中心に物事を考えていくことを大切にしたいのです。これまではチェースストアのロジックに従って効率化合理化を図ることで成長してきましたが、これからは、人が人によって価値とか、喜び、生き甲斐とかやりがいを創出していかなければならないのではないかと考えています。効率化や合理化は成長のための方法であり、目的化してしまうのは本末転倒です。商品を安く売りさえすれば良いというものもありません。
そもそも、商売にはお客様に満足や安心を提供していくという商人道があったと思います。そこに立ち帰るということかもしれません。そのために私どもは物事の本質を見極める力を養っていかなくてはいけないと思います。本質を見極める力は、健康に限らず様々な問題に対して、対処療法ではなくて根本療法を見つけられる力のことであり、弊社の「未病」という事業テーマにつながっています。社員一人ひとりの考え方かしっかりしていけば、かならずいい成果が出ると信じています。

─ それは社風にも繋がっていそうですね。

対話を通して問題意識を共有し、共に解決方法を考えます。

会社の理念、ビジョンは、社員全員が同じように考えられるようでなければとも思います。ですがこれは、私からの上意下達では伝わらないし形骸化してしまいます。つまり社員にとっては自分事にならないと考えています。そうした考えに立って幹部と車座になって対話をする取り組みをしています。その幹部がその部下と車座になって対話をする場をつくっていく。浸透すれば会社は変わっていくと期待していますし、その結果、社員皆が“この会社で働けて良かった”と思ってもらえると確信もしています。これは終わりのない取り組みで常に現在進行形です。時に、遅々として進まないなぁという想いがかすめることもありますが、社員のそれぞれが抱える問題意識を共有しながら、どう解決していけば良いのか共に考えていかなければ、行動変革にはつながらないし成果は出ません。対話を通してお互いの考えや想いを共有し共に考える社風を大切にしたいと考えています。

─ そのお考えはお店の従業員一人ひとりまで同じですか。

ブロック長と店長との対話でも同じです。

繰り返しになりますが、人は他人からこうあるべきだと言われ、頭で分かったとしても行動にはなかなか繋げられません。それでもお店に立つパートさんやアルバイトさんも、会社の理念を共有し同じように考えて行動できるようなっていただきたいと考えます。
考え方も方法も幹部との対話と同じです。6〜7店舗を担当するブロック長がおります。ブロック長が店長との対話の場を持ちます。お店の現場で起こっている問題を共有し、対話の中で一緒になって解決方法を探ります。弊社の最終的な要は店長ですから、店長が納得いくまで話しあいます。ブロック長も店長もお互いが学び合う場になっている様子です。
ただ実際にはまだまだだとは感じてもいます。それでも、お客様から「あなたと話して元気になりました」という声が寄せられるようなお店も増えてきています。私どもの仕事は機械的なものではなくてface to faceでお客様と接する仕事です。そのことを従業員の全員に伝えることの難しさを感じながらも、一歩ずつ前進していきたいと考えています。

─ 仕事でのやりがいはどんなところにありますか。

お客様から「ありがとう」をいただける仕事です。

私どものビジネスの現場は店頭です。数あるドラッグストアの中でキリン堂を選ぶ何かが大切です。その価値創造の現場も店頭にあります。実際のやりがいとして、お客様から頼られているという実感が得られます。店舗では接客以外の仕事もありたいへんですが、その中でもお客様と直接話ができて、「ありがとう」の一言をいただけることがあります。他のビジネス、他の物品販売の現場ではなかなか無い事ではないでしょうか。病院の先生の診察や治療に対して「ありがとう」と当たり前のようにお礼を言いますが、一般の物品販売業では、店員がお客様に「ありがとうございます」とお礼しても、その逆はあまりありません。ドラッグストアが扱っている商品は、接客によって「ありがとう」をいただける仕事で、やりがいもそこにあると思います。お客様に寄り添い、お客様の悩みに向き合う仕事だと思います。

─ 人材育成についてのお考えを教えてください。

単なる販売ではなく、お客様に付加価値を提供することを追求しています。

教育体制の基本は創業時からのベースがありマネージメントについては従来通り行っていますが、現在は、単に商品を販売するということではなく、どうすればお客様に付加価値を提供できるのかということを追求しています。これは現在模索中で、簡単には答にたどり着けない課題です。単に仕事の効率化や合理化を図るというものではありません。お客様に喜んでもらうために何ができるか、どのような考え方が必要なのかは、単純なマニュアル教育では身につかないと考えています。販売を通じていろいろな問題が起こり課題化されていく中で、どういう風に自分はそれらの物事ついて考えていけば良いのか、常に立ち戻りながら向き合う中で考え方や販売の仕方は獲得されていくものです。教育の仕組みとして、いろいろな方法を試しているところです。

─ 求める人材像について教えて下さい。

人への興味関心と成長意欲を持っていて欲しいです。

これまでの話とつながりますが、とにかく人に興味を持っていることです。これは外せません。付け加えて、成長したいという意欲を持っていて、そのための問題意識を持っていることです。問題意識を持っていれば、成長のきっかけや原動力になりますから。

─ 最後に学生へのエールをお願いします。

興味を持ってどんどん挑戦する。喜びも苦しみも心の根や筋肉になる。

「和而不同」という言葉があります。安易に他人の意見に従って楽をするのではなく、他人と違う自分を持ち、他人との関係性の中で自分を活かすことができる。協力はするが同調はしないという意味です。そうした態度には、自分を知っていることが必要です。
いろいろな興味を持って、いろいろなことに首を突っ込んで欲しいです。やりたいと思ったら挑戦する。それが青春であり、若さであり、生きる原動力になるのではないでしょうか。学生時代にその根っこを作っておくとこの先ずっと活きるでしょう。この一週間に感動したことある? うれしかったことは何? 悲しかったことは何? と自分に問いかけてみて下さい。そういうものを沢山持っていないと先細りしてしまいます。人と関わらないと楽できるのですが、自分の活かし方も分からなくなります。興味を持って何かに取り組むと、楽しいこともあれば、悲しいことや苦しいこともあると思います。でもそれは、生涯を支える心の筋肉になります。

インタビューを終えて
寺西社長の丁寧な話され方に、終始一貫して人を大切にしたいという想いが溢れているように感じました。単なる想いに止まらない“人を大切にしなくてはいけない”という責任感を強く感じました。お客様第一主義と言っても、それを実現するために何が必要なのかを徹底して掘り下げて考えていらっしゃる。接客販売に携わる従業員一人ひとりが、お客様の「ありがとう」を大切にする。会社は一人ひとりの従業員の成長や働きがいを大切にする。まだまだできていないという言葉に、人を育てることへの深い洞察と信頼を感じました。

発行人:一般社団法人プレミア人財育成協会 代表理事 勝亦 敏